あかいろのしずく
そしたら自然と、涙が目に滲んだ。
それはさっきまでいた世界の温かさと、どこか似ていたから。
「あのね、ほんとにね、びっくりしたんだよ。目、覚まさないもん。死んじゃってるんだと思った」
声が震えていた。ナナカは、俺の肩に顔をくっつけて、くぐもった声でそう言った。
部屋の隅で炎が小さく揺らめていた。地面が熱い。下の部屋から煙が上って来ているのか、辺りが少し煙臭かった。
純が言っていた「呼んでいる人」って、ナナカのことだったのか。嘘じゃ、なかったのか。今更ながら気づいた俺は、泣きそうになるのを堪えて言った。
「死んだんだよ、ちょっとだけ」
泣くのは天国にいた時だけで、充分だと思った。