あかいろのしずく

俺はそれを悟られないように、笑って言った。



「俺、お前のこと好きだぞ」



空気がしん、と静まり返るのが分かった。
胸が温かい。満たされた気持ちだった。

純、ありがとう。ナナカ、ありがとう。
痛みも弱さも忘れるぐらい、優しい言葉をありがとう。

ショウト、サユリ、藤谷。ミナトも、ありがとう。




「そういう真面目なとこも、面白いとこも、なんか、見てて楽しいんだ」



出会った時は生意気な奴だ、って思ったけどさ、案外そこが良かったのかもな、なんて。ちゃんと見てなかったんだろうな、人の事を。


俺、サイテーな奴だな。

少し周りを見るだけで、俺のことをちゃんと見てくれている人と目が合うんだ。それも知らずに今まで歩いてきたんだ。そりゃ、辛くもなるよな。
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