あかいろのしずく
静かに、頭上に夜空が現れた。
俺は咄嗟に地面に手をついて勢いをつけて、もうほとんど力のない足に思い切り力を込めて進むと、ナナカの体の方に倒れるように覆いかぶさる。
「うそ」
そう呟いたナナカの目が、これから来るであろう衝撃のために反射的に瞼を閉ざす。
瞬間、俺はナナカの上に倒れ、その上から途轍もない重みと衝撃が加わる。残っていた屋根がゆっくりと崩れたためだった。
骨が軋むような音がした。足が潰れた気がする。
想像を絶する痛みに襲われ、最初こそ意識を保っていたものの、それも長くは続かず。
生温かい赤の液体が、床にくっついた肌に触れるのが分かった。
隣を見れば黒い影に埋もれ、瓦礫の隙間からナナカの黒い髪の毛が垂れている。
それが俺の見た、最後の景色だった。