あかいろのしずく


病院の桜、早いけどもう咲いてるの、きれいだよ。
東の個室からも見えるんだって。


いつだったか東先輩の手紙を受け取った時に、さゆりさんから聞いたことを思い出す。




もうすぐで会えるのだと思うと、口元が緩んだ。

いけない、と首を振って、ぱしんと一つ手のひらで頬を叩く。熱くなっていた頬がじんわりと痛んで目を瞑る。

それから青空を吸い込むように大きく息を吸うと、私はもう一度真っすぐ前を向いて、最後の木漏れ日を蹴った。










end


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