年下王子の言いなり。

何事だ、何事だ。
ここは用心深く行かないと。

「町屋さんが来られました。」

社長と2人っきりになってしまった。
秘書と3人でいた方が、まだ楽なのに…

「お姉さんじゃなくて、町屋由希子さん。
来てくれたんだ。」

あの、、若い男？

「えっ、なんでここにいるの？社長は？」

「社長は海外出張。
そういや、名乗ってなかったね。
俺は『貴院理人（きいん りひと）』。
社長の一人息子ってとこかな。」

社長の一人息子？…頭が混乱しまくっている。
ってことは、社長の息子と一夜を過ごしたって
こと？……どうしよう、やばいやばいよ。

「あの、夜のことは無かったことに
できませんかね？記憶になくて…」

「夜のこと？ああ〜、何もなかったよ。
ただ、由希子さんが1人で裸になっただけ。」

「1人で裸に…」

なんてことをしてしまったんだ…
社長の息子に、全裸姿を見せるなどと…
夜の事とは音沙汰なく、寂しかったといえ、
ただの変態じゃないか私よ。

「軽率な行為をおかして
申し訳ございませんでした。」

「ああ、イイよ。
その代わり、撮らせてもらったから。」

「撮らせてもらった…？」

「あっ、、、」

それは課長のことを語る私の姿が
動画として撮られていた。
数々の失言が飛び交っており、とても人に
聞かせられるものではない。

「この動画の代わりに、
　お願いを聞いて欲しいな…。」

ここで拒否をしたら、
後がどうなるかはわからない。
課長にバレ、会社から信用を失い、
全てにおいて終わる。
それはダメだ。

「何を聞けばイイの？」

「聞き入れてくれるんだ、
ありがとう、由希子ちゃん！！」

この後、私が貴院理人に振り回される
日々を送るとは、まだその頃の私は
知る由もなかった。