広瀬くんは、いっぱい食べる私が好き
それに比べて私は……やっぱり弥生の言う通り、色気より食い気だなあ。

でもそれで特に不満はないんだけどね。

食べるの好きだし。幸せな気持ちになるから。

「……うーん。まだちょっとお腹すいてるかも。デザート買ってきてもいい?」

「はいはい、行ってきな。あたしまだ食べてるし。……そんなけ食べても太らなくてうらやましいよ」

「えへへ。行ってきまーす」

席をたってデザートの購入列へと向かう。

デザートは食券がなく、直接買える仕組みになっているのだ。

(……なにがいいかなあ。プリン……アイス……フルーツゼリー……。うーん……今日はあのあまーいプリンの味が恋しいかも……)

頭がデザートでいっぱいになっていたからだろうか。

「…きゃっ」

うっかり人にぶつかってしまった。

「すみません!大丈夫……あ、日下部《くさかべ》さん」

「ひ、広瀬くん。わ、ご、ごめんなさいー!」

相手はなんと広瀬くん。

手にはカレーの器を持っている。

どうやら返却するところだったみたい。
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