広瀬くんは、いっぱい食べる私が好き
☆ ☆ ☆

「のんちゃん?大丈夫かい」

「……へっ?」

呼び掛ける声にハッと我に返った。

目の前には、心配そうな顔をしたお父さんが座っている。

がっしりした身体つきのお父さん。

でも眉尻をさげ、しゅんとした姿はまるで『プーさん』みたいな愛嬌がある。

「さっきからずっとぼんやりしているね。今日のクリームコロッケ、あまり口に合わなかったかい?」

「あ、そ、そんなことないよ!すっごく美味しい!……お父さん、ごはんおかわり!」

「はい、わかった」

お父さんは私のどんぶり茶碗にごはんをよそってくれる。

ほかほかとゆげをたてる白いごはん。

そしてお父さん特製の蟹クリームコロッケ。

トマトベースのソースがかかっている。

トロッとした蟹クリームとトマトの相性は抜群で幸せの味。

……でも

お父さんのいう通り、頭がどこかぼんやりして食事に集中できないでいた。

< 17 / 74 >

この作品をシェア

pagetop