広瀬くんは、いっぱい食べる私が好き
「なんで広瀬くん?……あ、そっか。和花、隣だもんね」

弥生がそう言うと、なにかに気づいたようにすぐ後ろの席を指差す。

「……気になるなら本人に聞いてきなよ。ほら、あそこで食べてるよ」

「ひゃ、き、聞けるわけないでしょ~!私のお腹の音聞きました?なんて~~」

「あはは!まあ、大丈夫じゃない?広瀬くんって真面目だし、もし聞こえてもそれでからかってきたりは絶対にないでしょ」

「それはそうだけど」

ハンバーグを一口でパクッ。そしてモグモグ。

いつも通りの美味しさを味わいながら、広瀬くんの方をそっと見る。

…私達のさわぎを全く気にする様子もなく、食堂のカレーを口に運ぶ広瀬くん。

相変わらずまっすぐ伸びた背筋で黙々とスプーンを動かすその様子は、不思議な緊張感すら漂っていた。

私と同じカレーを食べているはずなのに、全然違う食べ物みたい。

「……なーに、和花。広瀬くんをじっと見て。もしや好きなの?」

「え、ち、違うよー。確かにカッコいいとは思うけど、自分にないものに対する憧れというか。ほら、広瀬くんといつもシャンッとしてるかな、すごいな~って」

「確かに。和花はいつもフニャフニャしてるもんね」

弥生がいたずらっぽく笑った。
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