広瀬くんは、いっぱい食べる私が好き
***

「いただきまーす!」

「いただきます。……って、和花。いつにもまして、今日はよく食べるね」

「うん。さっき体育だったからかな。お腹すいちゃって」

今日はいつも通り弥生と学食でお昼ごはん。

私のメニューはお父さんのお弁当と、食堂のからあげ定食ときつねうどんだ。

うーん。どれも美味しそう!

「……食べ過ぎじゃない?前から思ってたけど、日下部さんやばいよね。気持ち悪」

……ん?

それほど大きい声じゃなかったのに、なぜか耳に届いてきた。

思わず声の方を振り向いてしまう。

すると少し離れた席に、女子のクラス委員・更級さんがこちらに背を向けるようにして座っていた。

ほんの少し振り返り、肩越しに私を見ている。

でも私と目が合うと、ぷいっと顔を背けた。

……ん?ん?ん?

今のもしかして更級さんが言ったの?

私のこと。

食べ過ぎは事実にしても。

やばいとか。気持ち悪いとか。

……そう、言ったのかな。

「和花、どうした?」

「え、あ、な、なんにもー。さ、食べよ食べよ」

いやいやいや。

あんまり気にしないで、私。

自分でもこれだけ食べたら引かれても仕方ないかなーと思っているところはあるし。

それに聞き違いかもしれない。

だって更級さんだよ。

クラス委員で、砂糖菓子みたいにふわふわ可愛くて、いつもニコニコしている。

更級さんはそんな子だ。

むやみに疑って、勝手にもやもやするのはやめよう。

せっかくの昼食が美味しくなくなっちゃう。

更級さんにもご飯にも失礼だよ。

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