広瀬くんは、いっぱい食べる私が好き

｢広瀬くん、悩み中？｣

｢あ、うーん……せっかくだから普段使わないような食材にしたいと思うんだけど……｣

｢だけど？｣

｢冒険しすぎて失敗しても困るな、と。やっぱり美味しい料理を作りたいし｣


そう言いながら首を傾げて考え込む仕草。

広瀬くん。どうやら本気で悩んでいるみたい。


周りの人たちは、それぞれ楽しそうに餃子をポンポン作っていっている。

もちろん具に迷うこともあるけど、広瀬くんのように頭を抱えている人はいない。


それはそうだろうなあ。

合わない組み合わせがないわけじゃないだろうけど、１つ２つそんな餃子があってもどうってことない。

むしろそんなハプニングも餃子パーティーの楽しみだと思う。


広瀬くんは真面目すぎる。

良くも悪くも。


このとき初めて広瀬くんの真面目さを……少しだけ歯がゆく感じた。


｢ね、広瀬くん。私の自慢なんだけど｣

｢え？｣

｢私、大体なんでも美味しく食べられるんだよ。嫌いなものほとんどないよ。なんでも大好きだし、美味しい。お父さんの料理なら特に……かな｣

｢日下部さん｣

｢だから大丈夫だよー。私、広瀬くんの料理たくさん食べてみたいな。広瀬くんの好きなように作ってみようよ。少なくとも私は美味しく食べちゃうよー｣