広瀬くんは、いっぱい食べる私が好き
「なに?日下部さん」

広瀬くんは足をとめ、身体全体で振り返る。
特になにも考えてなくて、無責任に引き留めた私のことをまっすぐに見てくれる。

「あの、えーと……」
「うん」
「えーと……あ、そうだ。広瀬くん、リクエストとかってない?」
「リクエスト?」

広瀬くんが小さく首を傾げる。

「そう。教室で作る料理のね。作りたいものとか。広瀬くんの好きな料理とか」
「リクエストとかしてもいいの?」
「うん。のんびり楽しくがモットーだからねー。ときどきリクエストの料理したりするよー。あ、あんまり本格的すぎるのは難しいかもだけど」

うちの料理教室は、どちらかといえば誰でも作れるような家庭料理が中心だ。

広瀬くんは「そうだなあ…」と口元に手を当て考える仕草。
でもすぐになにかを思い付いたみたいに顔をあげた。
なぜかちょっぴり恥ずかしそうな表情。

「じゃあ、オムライス‥‥とか」
「オムライス?広瀬くん好きなの?」
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