ただひたすらに君が好きだ
こんなのは、あんまりだ。

彼女が出場する予定であったインターハイ当日、俺は会場ではなく唸るような暑さの中制服をしっかりと着て小高い丘に来ていた。

ここは珱と小さい頃によく遊んだ場所。彼女
はあの頃から体力お化けだった。



「こんなのってないよな」



珱が倒れたあの日、あのまま意識は戻らず彼女は死んだ。


まだ16歳だった。



俺は少し離れた火葬場の煙をぼんやりと見つめている。


あの煙と共に彼女も上っていくのだろう。



ずっと、珱の最後が頭から離れない。


直前まで元気だったのだ。


彼女の命を奪ったのは心臓発作。


あっという間だった。


こんなにも命は簡単に消えてしまうのだ。


これから楽しいことをいっぱいしたいと言っていた彼女が、居なくなってしまった。


「珱…」


珱の葬式で俺は涙が出なかった。冷たい奴だと思われただろうか?

ただ、実感が湧かないのだ。

ドッキリでした〜〜〜〜!!とか今にも言いそうなあんな綺麗な顔を見れば。

眠っているだけ、そう見えたんだ。


昔からいろんな人を幸せにできるような人になりたいと言っていた珱。

見ろよ、珱。おばさんもおじさんもめちゃめちゃ泣いてるじゃん。

1番近くの大切な人が泣いてるじゃん。


その姿が見ていられなかった。


火葬場ではもう限界で自分の母親に声をかけて建物から出た。

母さんは、何も言わなかった。




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