結婚行進曲
●逃げた英雄の娘
酷い話である…
これからヤツがしようとしている事は父親公認の「待てよハニ~捕まえてごらんダーリン的ストーカー行為」である。
これが娘にする仕打ちだろうか?
大体!
自分たちは恋愛結婚してるくせに酷過ぎないか?!あたしの夢ってそんなに贅沢なことか?!
…なんて
情に訴えたところであのクサレ外道親父の事だ。いいように丸められてジ・エンドに決まっている。
…やはりここは相手が諦めるまで逃げの一手か。
いや、まてよ…
相手に断らせるという手もある。
相手が嫌になってくれれば話は簡単である。
テキトーに理由付けて過剰防…いやいや、正当防衛で収まる程度にコテンパ…コホン、程々にはり倒してでもみるか。
英雄だのと騒がれている父を持つと嫌でも色々と身に付くモンである。
たかだか一国の魔法術士をのすぐらいあたしにはわけない事である。
まあそれは最終手段として、とにもかくにもここにいては見つかるのは時間の問題である。
しかしもっていかにも女の子です的フリフリな服で逃げていたのでは目立ちたくなくても目立ってしまう。
…よくよく考えたら朝この服が枕元に用意されてた時点で気づくべきだった…。
あたしは服を脱ぎ捨てた。
変な妄想も一緒に捨てなさい読者諸君。
いくらなんでもさすがにハダカでは逃げないってば。
あたしは家を出がけにさりげ~に掴んで持ってきたバックに手をつっこんだ。
こんなこともあろうかと用意していた非常用バック。
中には変装グッズと少量の金銭と護身用の短剣。
変装グッズと言っても至って普通の服である。
ゆったりめの黒のハイネックに白のGパンに渋めの色のマント。
それと胸を潰して隠す用兼護身用のベスト。
そう、男物というトコ以外は。
もともと父親に似た男顔。
今までただの一度も見破られた事がない。
うぅ…あんまし素直に喜べない…
腰に護身用の剣を挿し準備万端!
かくてコソドロの如く抜き足差し足そろ~りと納屋を後にした。