結婚行進曲

「ちょっとちょっとそこのお兄サン、
 お年寄りはもっと大事にしなきゃいかんぜよ」

とチンピラの左肩にポンっとため息交じりに手を乗せるあたし。


「何だテメェ?!ぶっ殺されたてぇか?!アァ?!」


この展開にこの状況
加えてとうの昔に消え果てたであろう月並みの台詞にはもう呆れを通り越して問答無用ではり倒したい衝動に駆られるあたし。

ぅう…我慢我慢…。


「まあまあ、いったいどうしたんだ?」


尋ねるあたし。


「どうもこうもねぇ!!
 このババァ、めちゃくちゃ高い値段で腐りモン売りつけやがったんだ!!」


あたしに向き返り、ここぞとばかりに怒鳴るチンピラ。


「テオドールなんぞどこの店でも売っておるわいッ!
 大体おぬしに売った覚えなどないぞぇッ!この(ピ-放送禁止用語―ッ)がッ!!」


負けず怒鳴るばーさん。
…中々好戦的なばーさんである…


「ボケてんじゃねぇぞクソババァ!!
 とにかく代金は返してもらうぞッ!!」

「これ!!何をするんだねッ!!」


ばーさんから銭の入った袋を取り上げるチンピラ。
それをすかさず後ろから取り上げるあたし。

……。…このチンピラ、ありえない程とろくさい…


「~~~きさまァッ!邪魔をするなら容…」

「ねぇ君いくつ買ったの?」

「赦しねぇぞ…え?」


セリフの腰を砕かれ戸惑うチンピラ。


「お婆さん、これ1ついくら?」

「15チャロンだよ、なんだい買ってくれるのかい」


こんな状況だというのに呑気に商売ですかばーちゃん…。
年寄りにしとくの勿体ないくらい中々肝っ玉の据わっているばーちゃんである…


確かにチンピラが言うようにこのばーちゃんが売ってるテオドールは高い。

テオドールとはこの地方で多く取れるコブシより一回り大きい果物なのだが普通は1つ3チャロンくらいのものである。普通のテオドールは、である。
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