君が可愛すぎるから
真夏の日差しが照りつける朝、わたし有栖心結(ありす みゆ)は駅の階段を全力で駆け下りてホームへ向かう。
午前七時四十分、
海風学園に向かう電車の二両目に乗るのがわたしの日課。
二両目にのるために、ホームの先へと足を進めて、数人が並んでいる列のいちばん後ろに並んだ。
電車が来るまで、荒れている呼吸を整える。
季節は夏真っ盛りの七月。
外にいるだけで暑いのに、走ったせいで今はもっと暑い。
暑さをまぎらわすため、顔の前で手をパタパタさせながらあおぐ。
ついでに空いているほうの手で、少し乱れた前髪を軽く直す。
電車が到着する時間が近づいてくると共に、ドキドキと心拍数が上がっていく。
そして、駅のホームにアナウンスが流れて、電車が到着した。
プシューッと扉が開く音がして、前に並んでいた人たちが、電車の中に吸い込まれるように流れていく。
わたしもその波に流されるように、電車の中に乗り込んだ。
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