君が可愛すぎるから
朝のこの時間は、通勤通学ラッシュの人たちでごった返している。
わたしは周りの人に比べて身体が小さい。
そのせいで満員電車に乗ると、いつも人と人の間にはさまれたまま、身動きが全く取れなくなってしまう。
そのまま電車の扉が閉まり、発車のアナウンスが流れた。
本当なら、あと数本電車を遅らせて、
混み具合が落ち着いてからでも充分学校には間に合うんだけれど……。
この時間の、この車両に乗るには理由があったりする。
━━グイッ。
突然、右腕を誰かに掴まれて、少し強引に身体ごと腕を掴んできた人のほうへ引き寄せられた。
近づいた瞬間、ふわっと甘い香りがして、それに反応するようにパッと顔を上げる。
「……おはよ、有栖ちゃん」
落ち着いた、少し眠そうな声でわたしの名前を呼んだ男の子。