異世界で、なんちゃって王宮ナースになりました。~王子がピンチで結婚式はお預けです!?~
「レジスタンスの幹部はアストリアの国王を間接的にとはいえ死に追いやり、ミグナフタ国の兵を虐殺した。その罪を逃れることはできない」
先行きが暗くなる報告に一気に部屋の空気は重くなり、私は手のひらにかいた汗を服で何度も拭いた。
「だが、あなたたちのような罪人を生み出したのは人道を外れた権力者であり、その管理ができなかった国だ。それを鑑みた結果、主犯格であるプリーモ及びその他レジスタンスの幹部たちは王宮の塔に幽閉とする」
……え?
シェイドの口から告げられた処遇は寛大なものだった。
サイは死罪も覚悟していたのか、「それだけでいいのか?」と目を白黒させている。
「俺たちも一緒にって……」
途切れたオッターヴォの言葉の続きはノーノが繋ぐ。
「匿ってくれるってこと?」
自分の頬を叩くノーノはこれって夢?と補足がつきそうな仕草で、サイと同じようにシェイドに確認した。
「ああ。幽閉期間は未定だが、プリーモはこの先も治療が受けられるように信頼できる看護師を派遣する」
シェイドの視線がこちらに移り、抜擢されるのは自分だと悟った私は「任せてちょうだい」と向けられた信頼に笑みを返す。
静かに処分を受け止めていたプリーモは頭を下げた。
「恩に着る。エヴィテオールの王子」
「礼は必要ない。その代わり、あなたには俺の働きを見定めてほしい。俺が間違った道を進むのであれば、そのときは革命を起こしてもらってもかまわない」
「驚いた……大罪人であるこの俺に、そんな大役を任せるのか。正しい道を歩めると、よほど自信があるらしい」
プリーモが笑うと全員の表情が緩んだ。……かのように見えたのだが、クワルトは厳しい顔つきで「あのっ」と切りだす。
「僕は……罪滅ぼしになにか行動したい。プリーモは皆がいれば大丈夫から、僕は皆の分もこの命を懸けて償いたいんだ」
「その気持ちを汲んでやりたいが……」
どのような形で叶えてやるべきか、考えあぐねている様子のシェイドの元へ「入るわよ」とローズさんが颯爽と現れる。
「なら、あたしの下でエクスワイアになりなさいよ」
エクスワイアは騎士見習いのことで、騎士に昇格するのは狭き門だ。それに一介の兵ではなくいきなりエクスワイアになるのは異例中の異例なので、シェイドも怪訝な顔をした。
「ローズ、どういうつもりだ」
「あたしは国や使命から逃げた人間よ。だから、この子の自分の罪から逃げない姿勢が気に入ったの。罪滅ぼしするくらい、いいでしょ?」
しばらく悩んでいたシェイドだったが、ローズさんの意見に賛同したい気持ちが勝ったらしい。
「クワルト、お前の心意気が心に刺さった。政務官と話し合うことにはなるが、俺もできる限り善処しよう」
「――っ、ありがとうございます!」
勢いよく頭を下げたクワルトにシェイドは小さく笑い、マントを翻らせながら背を向けると部屋を出て行った。