やっぱ、お前は俺じゃなきゃダメだろ

彼氏や友だちだけでなく、通りすがりの男子高生にまで好き勝手言われている。
朋世はあまりに情けなくて萎れた菜っ葉のように肩をすくめた。

「誰だっていいだろ。俺が誰だか知ったところで、今のこの状況が変わるのかよ」

「変わらないね。うん……変わらない」

初彼に裏切られたことも友だちを一人失った現実も何一つ変わりはしない。
傷付いた心がまたヒリヒリする。

「これも何かの縁だろ。さっきお前が言えなかったこともそのちっぽけな心にパンパンに詰め込んだ想いも全部俺が引き受けてやるよ。
誰かも分からない名無しの権兵衛になら言えんだろ?」

朋世のボロボロになった心にその言葉は優し過ぎた。
彼女の目からポツリ、ポツリと涙が零れる。
その涙は地面を濡らして吸い込まれていく。

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