やっぱ、お前は俺じゃなきゃダメだろ
今思えば、あれは朋世にとって初恋だった。
懐かしくて、甘酸っぱい思い出で、傷付いた心にそっとホッカイロを当てられたように温かくなる。
「……でも、なんで要君?」
朋世は再び首を傾げた。
彼は幼稚園の頃に海外へ引っ越したはずだ。
隣の家にもつい最近まで若い夫婦が住んでいた。
「日本に帰ってきたのよ!みんな仕事が忙しくて要君ひとりらしいけど……。さっき、丁寧に挨拶に来て、朋世に会いたいって言うから“そのへんを散歩してる”って答えたのよ。
探してみますって言っていたからてっきり会えたのかと思ったのに……」
母は眉を下げ「要君に悪い事しちゃった……」と肩を落としてリビングへ戻っていく。
朋世も母の後を追ってリビングへ移動した。