やっぱ、お前は俺じゃなきゃダメだろ
STORY2. ヒーローじゃなかった


冬休み明け、クラスメートの若奈とは気まずい再会をした。
いつもなら挨拶のひとつもするはずなのに、互いに声を掛けたりせず一緒に話すこともない。

「若奈、すごいわ……。人の彼氏取っておいてめっちゃ普通だし。その神経の図太さ、もう尊敬の域なんだけど……」

同じく朋世のクラスメートで親友の内野 あいがぼやく。
あいは机に頬杖をついて太々しい表情を浮かべ、少し離れた席で雑談する若奈を見ていた。

事情を話した当初は“ふざけんな!”と鼻息を荒くしていたあいだったが、朋世がなだめると納得できないと言いながらも気持ちを鎮めてくれた。

「先輩が呼んでる。ちょっと行ってくるね!」

若奈はスマホを持って嬉しそうに席を立った。
そう言っていたのは自分だったはずなのにと思うと、朋世の胸はいまだに痛む。

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