やっぱ、お前は俺じゃなきゃダメだろ
「朋世、お待たせ」
部活帰りの風見は大きなスポーツバッグを持って現れた。背がスラッと伸びていて、栗色の髪の毛が夜風になびく。
「ううん、アタシも今来たところだから」
気がはやって三十分も前から待っていたなんてとても言えない。重すぎる。
「寒いから用件だけ言うな」
「うん」
「朋世、俺と別れて欲しい」
風見はなんの躊躇いもなく朋世に別れを告げる。
“朋世、新刊のマンガ貸して欲しい”くらいの軽いノリだった。
あまりに突拍子がなくて混乱状態の朋世は事実確認の為に「今、なんて……?」と聞き返した。
一度で聞き取れなかった朋世の事を彼はとても面倒だという表情を浮かべる。
「だから、別れて欲しいんだけど」
心遣いの欠片も無い言い方。