仮想現実の世界から理想の女が現れた時
午後は、部内の全員と面談をして過ごした。
売り上げを上げるための問題点や改善点を探していく。
「失礼します。」
へぇ、綺麗な子だな。
俺の彼女に対する第一印象は、その程度だった。
「瀬名暁里(せな あかり)さんですね。
現在、抱えてる仕事を教えてください。」
俺は他の人にしたのと同じ質問をする。
「現在は食品メーカーの『豆の木食品』さんの
在庫管理システムを開発しています。
営業は田中君で設計が長谷部主任で、
私は主にプログラミングをしています。」
「現在、困っている事、問題点やトラブル等
ありませんか?」
「特にありませんが、強いて言うなら、
納期が短くて残業が多い事ぐらいですね。」
ん?
何だろう?
普通の事しか言ってないのに、なぜか惹かれる。
話し方? 表情?
ちゃんと敬語で話してるのに、人懐っこさを感じる。
しかも、公然と不満を口にしてるのに、嫌味がないどころか、却って正直で好感が持てる。
「残業は、月にどの位ありますか?」
「納期が迫ってくると、60時間を超えます。
仕事は嫌いではありませんが、できれば
その日のうちに帰宅したいです。」
「ふっ」
思わず、笑みがこぼれる。
初対面の上司に、こんなに明け透けに不満を言えるなんて、度胸が据わってるというのか、怖いもの知らずというのか。
「今日、40人以上面談してきたけど、そんなに
はっきり不満を言った奴は初めてだな。」
俺がそう言うと、途端に焦り始める。
「あ、すみません!
不満というわけじゃないんです。
残業がもう少し減るといいなぁ…という
小さな願望なので、聞き流してください。」
くくっ
こいつ、美人なのに壁がなくて、可愛らしい。
徳な性分だな。
「まあ、いい。
聞いたのは俺だからな。
他の奴は、思ってても言わない大人の知恵が
働いたんだろう。」
「…すみません、子供で…」
瀬名は申し訳なさそうに下を向く。
「いいんだ。
俺は聞きたかったんだから、正直に言って
くれて助かった。
これからも頼んだぞ。」
俺は気にしてないという意を込めて伝える。
だが、彼女の表情からは、分かりやすくどよんとした空気が見て取れる。
彼女の退室を見届けてから、俺は思わず、頬を緩めた。
こんな気持ちになるのは何年ぶりだろう。
売り上げを上げるための問題点や改善点を探していく。
「失礼します。」
へぇ、綺麗な子だな。
俺の彼女に対する第一印象は、その程度だった。
「瀬名暁里(せな あかり)さんですね。
現在、抱えてる仕事を教えてください。」
俺は他の人にしたのと同じ質問をする。
「現在は食品メーカーの『豆の木食品』さんの
在庫管理システムを開発しています。
営業は田中君で設計が長谷部主任で、
私は主にプログラミングをしています。」
「現在、困っている事、問題点やトラブル等
ありませんか?」
「特にありませんが、強いて言うなら、
納期が短くて残業が多い事ぐらいですね。」
ん?
何だろう?
普通の事しか言ってないのに、なぜか惹かれる。
話し方? 表情?
ちゃんと敬語で話してるのに、人懐っこさを感じる。
しかも、公然と不満を口にしてるのに、嫌味がないどころか、却って正直で好感が持てる。
「残業は、月にどの位ありますか?」
「納期が迫ってくると、60時間を超えます。
仕事は嫌いではありませんが、できれば
その日のうちに帰宅したいです。」
「ふっ」
思わず、笑みがこぼれる。
初対面の上司に、こんなに明け透けに不満を言えるなんて、度胸が据わってるというのか、怖いもの知らずというのか。
「今日、40人以上面談してきたけど、そんなに
はっきり不満を言った奴は初めてだな。」
俺がそう言うと、途端に焦り始める。
「あ、すみません!
不満というわけじゃないんです。
残業がもう少し減るといいなぁ…という
小さな願望なので、聞き流してください。」
くくっ
こいつ、美人なのに壁がなくて、可愛らしい。
徳な性分だな。
「まあ、いい。
聞いたのは俺だからな。
他の奴は、思ってても言わない大人の知恵が
働いたんだろう。」
「…すみません、子供で…」
瀬名は申し訳なさそうに下を向く。
「いいんだ。
俺は聞きたかったんだから、正直に言って
くれて助かった。
これからも頼んだぞ。」
俺は気にしてないという意を込めて伝える。
だが、彼女の表情からは、分かりやすくどよんとした空気が見て取れる。
彼女の退室を見届けてから、俺は思わず、頬を緩めた。
こんな気持ちになるのは何年ぶりだろう。