仮想現実の世界から理想の女が現れた時
「飯田部長、その節は、おいしいランチを
ご馳走していただき、ありがとう
ございました。」

暁里は愛想よく会話を始める。

「いえいえ、こちらこそ、迅速に対応して
くださったので、助かりましたよ。」

この飯田部長には、以前障害対応で伺った際に、ランチをご馳走していただいたんだそうだ。

「今日は、新たに追加したいシステムについて
提案させてください。」

暁里は淀みなく、商品説明をする。
飯田部長の細かな疑問にも耳を傾け、ひとつひとつ丁寧に答えていく。

「うーん、いいとは思うんだけど、一千万
でしょ?
稟議書あげて、通ってからじゃないとね〜。」

ま、普通はそうだよな。
今日は、ここまでか。

「稟議の決済は、墨田社長ですか?
もし、墨田社長のお時間が許せば、今から直接
お話させていただけませんか。」

お!?
まさか、暁里がここで食い下がるとは思わなかった。

飯田部長は暁里の非常識な願いを聞き入れ、内線でわざわざ社長秘書に電話をしてくれた。

「今日は13時に出かけるけど、それまでなら
時間、取れるって。
今から、一緒に社長室に行きますか?」

暁里のこの度胸は一体どこから来るんだ?
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