仮想現実の世界から理想の女が現れた時
「墨田社長のような方にそんな風に言って
いただけると、例えお世辞でも嬉しいです。」

暁里もまんざらでもなく、嬉しそうに答える。

営業スマイルだと分かってはいるけど、やっぱりむかつく。

「今日、お伺いしたのは…」

暁里は、先程、飯田部長にしたのと同じ説明を社長にもする。

社長も真剣に説明を聞いてくれた。

「大変魅力的ですが、金額が金額ですから、
少し考えさせていただけませんか?」

社長が言った。

「そうですか。
何か、疑問な点や不安な点はありますか?」

暁里は真摯に受け答えする。

「いえ、そういうわけではないんです。
気分の問題です。
本当に必要かどうか、一晩考えて決めた…と
いう事実で安心したいんです。」

「意外です。
以前、営業部でお見かけした社長は、指示が
はっきりしていて、自信に満ち溢れている
ように見えたので、納得できたら即決なさると
思ってました。」

穏やかに微笑んだ暁里は、明らかに社長を挑発している。

「ふっ
あなたこそ、意外に男を煽るのが上手い方だ。
今夜、食事に付き合っていただけるなら、今、
即決しましょう。」

それはダメだ!

俺は、口を挟みたくなるのを必死で堪えた。

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