仮想現実の世界から理想の女が現れた時
くすっ

俺とクマが同一人物だとは全然疑いもしない暁里に、思わず笑みをこぼす。

このままだと、暁里は永遠に自分では気づかないんだろうな。

そんな事を思いながら、俺は母の焼きそばを頬張る。

すると、向かいの席で母が怪訝な表情を浮かべた。

「悠貴、どうしたの?」

「は?」

「さっきから、携帯眺めてにやにやして。
そんなにおもしろいことがあるの?」

っ!!
しまった。親の前だった。

「いや、別に。」

俺は慌ててにやついた頬を引き締めて真顔に戻す。

それを見て、今度は母がにやりと笑う。

「悠貴、好きな女の子でもできた?」

「は!?」

「悠貴のそんな顔、初めて見たから。
どんな子? 今度、連れて来なさいよ。」

なんで、疑問形で尋ねたのに、俺の返事を聞かずに断定されてるんだ?

まぁ、間違ってはいないけど。

母、恐るべし。

「結婚が決まったら、
母さんにも紹介するよ。」

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