仮想現実の世界から理想の女が現れた時
もしやと思い、俺が暁里の机上に並ぶ名刺を除くと、俺と一緒にもらった名刺の他に、裏に携帯番号を記入した名刺を持っていた。

暁里には「そんな番号を登録する必要はない」って言ったんだけど、「緊急時に役に立つかもしれないから」と会社の番号と合わせて登録していた。


俺と一緒にいても、ほんの僅かな隙を狙って寄ってくる男がいるんだ。

この先、ひとり立ちしたら、絶対言い寄られるに決まっている。



だから、俺としては、暁里には俺のものだっていう確固たる証を身につけてて欲しい。

それも、できれば左手の薬指に。


でも、7月に出会ったばかりの男から指輪をもらうなんて、重いだろうか。

暁里はどう思うだろう。


「ふふっ」

俺が物思いに耽っていると、向かいから母の笑い声が聞こえた。

顔を上げると、母は俺によく似たその顔で、興味深そうに俺の顔を覗き込んでいる。

「な、なんだよ。」

居心地が悪く、俺が不貞腐れて言うと、

「ますます会ってみたくなったわ。
悠貴にそんな顔をさせる女の子。」

と笑った。

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