仮想現実の世界から理想の女が現れた時
「俺は…
別に、普通だろ。」

俺は母から目を逸らす。

「普通なわけないじゃない。
悠貴のそんな百面相みたいな顔、
初めて見たわ。
今までの子は、相手の子は悠貴の事を
思っててくれてるのに、
悠貴は冷めてたでしょ?
心配したのよ。
こんなんで悠貴はいつか本当に大切に
思える人ができるのかなって。
私がお父さんと離婚したのがいけなかったの
かなって後悔してみたり…ね。」

母は、笑顔で語る。

「べ、別に父さんとのことは関係ないよ。」

「そう?」

「ああ。
今までは、俺が好きになる前に向こうから
寄ってきただけで。」

「そっか。
じゃあ、今度は、相手が寄ってくる前に
悠貴が好きになったんだ?」

あ、しまった。
これ、語るに落ちるってやつだ。

「………ごちそうさま。」

俺は返事をすることなく、自室へ逃げ出した。

「ふふっ」

後ろから、母の楽しそうな笑い声が聞こえたけど、俺は気づかないふりをした。

はぁ…

30を過ぎても、母の前では、子供のままなんだな。


それにしても、指輪、どうしようかな…




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