仮想現実の世界から理想の女が現れた時

「まあまあ、ようこそ起こしくださいました。
上がってお茶でもいかがですか?」

言葉遣いは丁寧なのに、初対面から人懐っこさを感じさせる愛想の良さ。

さすが暁里のお母さんだ。

「ありがとうございます。
せっかくですが、この後出掛ける予定が
ありますので、また改めてご挨拶に伺います。
今日は暁里さんをお借りしてもよろしい
ですか?」

「あ、こんなのでよければ、どうぞどうぞ。」

くくっ
こんなのって…

「お母さん、こんなのって、ひどくない?」

暁里は抗議するが、お母さんは「はいはい」といなして取り合うことなく、

「いってらっしゃい。」

とにこにこ笑って手を振った。



「あれ、絶対、悠貴さんに手を振ってるし。」

暁里は助手席で不満を漏らす。

それを聞いて、俺は思わず笑ってしまった。

「くくっ
暁里のお母さん、暁里にそっくりだな。」

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