仮想現実の世界から理想の女が現れた時
山間部の渓谷とはいえ、岐阜の夏は暑い。

全国の天気予報で東京33度、大阪33度の時、名古屋36度と報じられる事がよくあるが、全国予報では表示されない岐阜は37度だったりする。

今も、額から汗が吹き出してる。

だけど、それでも暁里の手を離したくない。

俺が変なのか?



「悠貴さん、これ、怖すぎません?」

渡り始めてすぐ、暁里が俺にくっ付いてきた。

「だろ?
暁里より背が高い俺は、もっと怖いんだぞ。」

この吊り橋は、手すりが低い。
だから、手すりを越えて下に落ちるんじゃないかと思えてくる。

暁里は、しっかり握った手を振りほどいた。

やっぱり暑い中手を繋ぐのは嫌だった?

俺が暁里を見下ろすのと、暁里が俺の腕にしがみつくのは、同時だった。

「ははっ
そんな怖い?」

「怖いでしょ!?」

俺に頼りきってしがみつく暁里がかわいくて、少し意地悪を言ってみる。

「この後、また向こうまで戻るけど。」

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