仮想現実の世界から理想の女が現れた時
夕方、俺は瀬名に声を掛ける。
「瀬名、出るぞ。」
俺は行き先を記入するホワイトボードに『社外打ち合わせ・直帰』と記入し、先に立って歩く。
隣のビルの地下駐車場に向かうと、瀬名は戸惑った様子で、
「あの…どこに…?」
と尋ねる。
ほんっとに覚えてないんだな。
俺は内心、笑いを堪えながら、無言で駐車場に向かう。
「ここ、駐車場になってるんですね。
初めて来ました。」
瀬名はなんだか楽しそうにキョロキョロと見回す。
「ぷっ
2回目だろ?」
俺は堪えきれずに吹き出してしまった。
なのに…
「え?
初めてですよ。」
と不思議そうに答える瀬名。
「1回目は、酔っ払ってたからな。」
俺が教えてやると、瀬名は息を飲んで、口元に手を当て、顔を赤くする。
こいつは、ほんとに表情がくるくる変わるんだな。
俺が助手席のドアを開けてやると、
「お邪魔…します。」
とおずおずと乗り込み、運転席の俺に紙袋を差し出した。
「部長のお忘れ物です。
一応、洗濯してアイロンはかけておきました。」
俺は、「ありがとう」とそれを受け取り、後部座席に置いた。
俺は車を出して、あえて何も言わず、ホテルに向かう。
ホテルのロータリーに入り、ボーイに鍵を預けると、瀬名は分かりやすく狼狽える。
「あ、あの…」
瀬名の困った声に、思わず笑ってしまった。
どうせ部屋に連れ込まれるとでも思ってるんだろ。
「くくっ
なんか勘違いしてないか?」
「へ?」
「食事に来ただけだから。」
そう言って、俺はフレンチレストランへと向かった。
このホテルはうちの顧客の中でも上得意様にあたる。
宿泊予約から経理まで、ほぼ全てのシステムをフルオーダーで納品させてもらっているから、1度、様子を見に来ようと思っていたんだ。
それを知ってか知らずか、瀬名は雛鳥のように落ち着かない様子でついてくる。
俺は席に案内されると、メニューを広げて
「ワイン飲むか?」
と聞いた。瀬名は
「いえ。」
と首を振る。
「くくっ
遠慮しなくても、今日も送ってやるぞ。」
と嫌味を交えると、
「いえ、結構です!」
とムッとしたような返事が返ってきた。
ちょっと苛めすぎたか。
「瀬名、出るぞ。」
俺は行き先を記入するホワイトボードに『社外打ち合わせ・直帰』と記入し、先に立って歩く。
隣のビルの地下駐車場に向かうと、瀬名は戸惑った様子で、
「あの…どこに…?」
と尋ねる。
ほんっとに覚えてないんだな。
俺は内心、笑いを堪えながら、無言で駐車場に向かう。
「ここ、駐車場になってるんですね。
初めて来ました。」
瀬名はなんだか楽しそうにキョロキョロと見回す。
「ぷっ
2回目だろ?」
俺は堪えきれずに吹き出してしまった。
なのに…
「え?
初めてですよ。」
と不思議そうに答える瀬名。
「1回目は、酔っ払ってたからな。」
俺が教えてやると、瀬名は息を飲んで、口元に手を当て、顔を赤くする。
こいつは、ほんとに表情がくるくる変わるんだな。
俺が助手席のドアを開けてやると、
「お邪魔…します。」
とおずおずと乗り込み、運転席の俺に紙袋を差し出した。
「部長のお忘れ物です。
一応、洗濯してアイロンはかけておきました。」
俺は、「ありがとう」とそれを受け取り、後部座席に置いた。
俺は車を出して、あえて何も言わず、ホテルに向かう。
ホテルのロータリーに入り、ボーイに鍵を預けると、瀬名は分かりやすく狼狽える。
「あ、あの…」
瀬名の困った声に、思わず笑ってしまった。
どうせ部屋に連れ込まれるとでも思ってるんだろ。
「くくっ
なんか勘違いしてないか?」
「へ?」
「食事に来ただけだから。」
そう言って、俺はフレンチレストランへと向かった。
このホテルはうちの顧客の中でも上得意様にあたる。
宿泊予約から経理まで、ほぼ全てのシステムをフルオーダーで納品させてもらっているから、1度、様子を見に来ようと思っていたんだ。
それを知ってか知らずか、瀬名は雛鳥のように落ち着かない様子でついてくる。
俺は席に案内されると、メニューを広げて
「ワイン飲むか?」
と聞いた。瀬名は
「いえ。」
と首を振る。
「くくっ
遠慮しなくても、今日も送ってやるぞ。」
と嫌味を交えると、
「いえ、結構です!」
とムッとしたような返事が返ってきた。
ちょっと苛めすぎたか。