仮想現実の世界から理想の女が現れた時
好き嫌いはないと言うので、俺は、コース料理とノンアルコールのワインを注文した。

「さて…
先に瀬名の話から聞いてやろうかな。
俺に聞きたい事があるんじゃないのか?」

瀬名は大きく息を吸ってから、口を開いた。

「単刀直入に伺います。
月曜日、何があったんでしょうか?」

「くくっ
お前は車に乗るなり、ぐぅぐぅ寝たんだよ。
家に着いても、全く起きない。
仕方ないから、抱き上げて部屋まで連れて
行き、鞄から勝手に鍵を出して開けて入った。
玄関に捨てて帰るのも可哀想だと思い、
ベッドまで運んだ。
ところが、そこで目覚めたお前は俺のシャツを
掴んで離さず、『帰るな、一緒に飲め!』と
絡んだ。
酔っ払いの相手をしたくない俺は、
シャツだけ脱いで、鍵をポストに入れて、
そのまま帰った。
空蝉だな。
他に何か質問は?」

俺が説明すると、瀬名の顔がどんどん引きつっていく。

「!!!
大変ご迷惑をおかけしました。
申し訳ございません。」

瀬名は平謝りで頭を下げる。

「お前、あれは襲われても文句言えないぞ。
大人なんだから、もうちょっと飲み方を
考えろ。」

俺が注意をすると、

「本当に申し訳ありません。
でも、私は田中君といる時しか飲まないので、
大丈夫です。」

とあり得ない言い訳をする。

「ほう、田中になら襲われてもいいと?」

「っ!!
違います。
田中君は、絶対そういう事はしないので、
大丈夫なんです。」

「なんで?」

「へ?」

「なんで田中はお前を襲わないと思ってる?」

「同期で、いい友人ですから。」

はぁ…

「お前、バカ?」

「は?」

「田中は、お前を女として見てるよ。
あいつがお前に手を出さないのは、体だけが
欲しいわけじゃないからだ。
お前の心がどうやっても手に入らないと
分かったら、体だけでも欲しいと思った瞬間に
襲ってくるぞ。」

まったく…
人を信用するにも程があるだろ。
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