仮想現実の世界から理想の女が現れた時
17時過ぎ。

帰社した暁里はすごい勢いで契約内容を入力し、報告書も作成していく。

元SEだけあって、いつもキーボードの入力速度は他の営業より早いが、今日はいつにも増して早い。

くくっ

今夜の約束のために、急いで仕事を片付けてるな。

俺はそんな暁里がかわいくて仕方ない。

俺は目の端で暁里を眺めながら、俺も残業を回避すべく、暁里の契約書類に判を押し、仕事を片付けていく。


18時。

「お先に失礼します。」

暁里はひとり、先に会社を出る。

付き合ってることを公表していないので、仲良く一緒に帰るわけにはいかない。

少し間を置いて会社を出た俺は、駅で待つ暁里の元へと向かう。



「お待たせ。
さ、行こう。」

俺は暁里の手を取って、電車に乗る。

向かうのは、スカイツリー。

高速エレベーターで予約をしておいたフレンチレストランに向かう。



「佐久間です。」

応対した店員に名前を告げると、すぐに席に案内された。

「夜景が綺麗ですね。」

暁里が嬉しそうに景色を眺める。

秋分も近くなり、まだ19時だけど夜景が楽しめるほど、景色は宵闇に包まれている。

「ああ。」

返事は返すが、今から俺がクマであることを明かすと思うと緊張感が半端でない。


しばらくして、店員がグラスにシャンパンを注いでくれた。
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