仮想現実の世界から理想の女が現れた時
それを聞いて、俺は、小さな定食屋に入った。

「意外です。
部長は、もっとお洒落なお店にしか行かないと
思ってました。」

瀬名は店内を見回しながら言う。

「くくっ
それは、この店に失礼だぞ。」

俺が指摘すると、瀬名は悪びれもせず、

「いえ、私はこういうお店、好きですよ。」

と微笑んだ。

「何、食べる?」

「んー、じゃあ、生姜焼き定食を。」

「すみません。
生姜焼き定食1つと鯖の味噌煮定食を1つ。」

俺はオーダーしてから、定食屋に入った理由を説明する。

「営業は、昼に絶対にんにく臭くなったり
できないんだ。
だから、中華やイタリアンは避ける。
そうすると、定食屋や蕎麦屋が1番安くて
無難な選択になるんだ。」

「勉強になります。」

くくっ
こんな時まで真面目か。

「瀬名は、さっき佐藤部長がいらっしゃった
時、俺より先に立っただろ?
よくできたな?
たいていの新人はあそこでお説教なんだが…」

「一応、秘書検定の勉強をした時に習った
ので。
常識的な挨拶や立ち居振る舞いは覚えている
つもりです。」

へぇ
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