仮想現実の世界から理想の女が現れた時
午後は、最終契約のみ。

東京へ来て、俺が最初に営業に出た会社だ。


部長は、席にふんぞり返って指示を出していればいいと言う人もいる。

だけど、俺は現場の感覚を忘れたくないし、何より、じっと座ってるよりこうして現場に出てる方が好きなんだ。

たとえ、そのために事務作業が滞って残業が増えようとも。


俺は、契約に必要な書類に次々に署名、押印してもらい、手続きをしていく。

「ありがとうございました。
必ずご満足いただけるシステムを納品させて
いただきます。」

俺は、立ち上がって、きっちりとお辞儀をした。

瀬名もそれに習って頭を下げる。


書類を手にその会社を後にしたのはまもなく16時という頃だった。

「初めての事ばかりで疲れただろ?
少しお茶してくか?」

俺は瀬名を気遣って声を掛ける。

「いいんですか?」

瀬名は窺うように上目遣いで俺を見上げて言った。

こいつ、俺のこと、ほんとに鬼だと思ってるだろ。

「今日だけな。」

俺が言うと、瀬名は途端に顔を綻ばせた。

「ありがとうございます。」

まったく、現金な奴。
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