ラブパッション
言葉通り、困らせているのはわかっているから、私もぎゅっと唇を噛んだ。
なんて言っていいかわからず、無言でいると、私の伏せた視界の中で、彼の靴の爪先の向きがくるっと変わった。
そのまま、私を置き去りにして、歩き出してしまう。
周防さんにはああ言ったものの、まだはっきり覚悟しきれないのは、重々自覚している。
彼との恋に落ちたら、私はきっと世界を見失う。
結婚してる人を好きになるなんて、正気じゃないのはわかってる。
一度ならず二度拒まれた今、ここで想いを断ち切って、彼とは別の方向に歩き出すべきなんだろう。
でも、やっぱり、離れていく彼の背中を追いかけて捕まえたい衝動が、突き上げてくる。
目に映る世界が変わっても。
私の中の常識が、不道徳に塗れていっても。
理性と衝動。
情熱と冷静。
私の中で相反するもののすべてが、私の背中をドンと押す。
私は、まるで突風に煽られるように、一歩前に踏み出した。
崖っぷちに追いやられて開けた視界に、見たことのない清々しい世界が開けたような気分で、私は奮い立つ。
その先の世界を知りたいなら……もう、飛び込んでしまえばいい。
「ま、って……!!」
ビルの正面玄関を出て、外の通りの人混みに溶け込んでいきそうな背中に、絞り出すような声を浴びせた。
なんて言っていいかわからず、無言でいると、私の伏せた視界の中で、彼の靴の爪先の向きがくるっと変わった。
そのまま、私を置き去りにして、歩き出してしまう。
周防さんにはああ言ったものの、まだはっきり覚悟しきれないのは、重々自覚している。
彼との恋に落ちたら、私はきっと世界を見失う。
結婚してる人を好きになるなんて、正気じゃないのはわかってる。
一度ならず二度拒まれた今、ここで想いを断ち切って、彼とは別の方向に歩き出すべきなんだろう。
でも、やっぱり、離れていく彼の背中を追いかけて捕まえたい衝動が、突き上げてくる。
目に映る世界が変わっても。
私の中の常識が、不道徳に塗れていっても。
理性と衝動。
情熱と冷静。
私の中で相反するもののすべてが、私の背中をドンと押す。
私は、まるで突風に煽られるように、一歩前に踏み出した。
崖っぷちに追いやられて開けた視界に、見たことのない清々しい世界が開けたような気分で、私は奮い立つ。
その先の世界を知りたいなら……もう、飛び込んでしまえばいい。
「ま、って……!!」
ビルの正面玄関を出て、外の通りの人混みに溶け込んでいきそうな背中に、絞り出すような声を浴びせた。