ラブパッション
「これは、私が周防さん以外の人を好きになって、普通の恋を始めるための、リハビリです」

「え?」

「責任とって。そう言ったでしょう?」


周防さんが、グッと言葉に詰まって黙り込む。
そんな彼は、心の葛藤が見え隠れするほど、危うく無防備だ。
大きな手を顔に当て、答えを出せずにいる彼に、私は焦らされる。


「周防さん」


顔を隠す手をどかそうと、その腕に手をかける。
抵抗なく離れた手の向こう、指の隙間から私に向けられる黒い瞳に、ドキッと胸が跳ねる。


一瞬宙で視線が交差した後――。
周防さんはいきなり私の腕を掴み、強引に引っ張った。


「あっ……!」


不意を衝かれ、足を縺れさせる私を、無言のままビルの陰に連れていく。
正面玄関からも人が行き交う大通りからも死角になる一角に、身を滑らせ……。


「っ……!」


息もできないほど強く、掻き抱かれた。


「お望み通り、責任とってやる」


強い口調。
なのに、なぜか、心ごと縋りつかれたような錯覚を覚える。


「だからさっさと俺に幻滅して、他の男を好きになれ」


周防さんが私を抱く腕に力を込め、意地悪に耳元に囁きかける。
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