ラブパッション
『身体が目当てで会う約束をする男なんて、嫌だろ?』


優さんは、私の想いを断ち切るために、幻滅させようとしている。
だからか、私を抱く時の彼は、オフィスでの物腰柔らかい紳士的な雰囲気からは想像もできないほど、強引で荒々しかったり、気まぐれに私を焦らしたりもする。


私は毎回違った顔を見せる彼に翻弄されて、怒ったり拗ねたり、泣いてムキになったり、縋ったり甘えたり求めたり……自分でも忙しい。
いっぱいいっぱいだけど、行為の後、いつも肌を重ねてぎゅっと抱きしめてくれる彼に、蕩けてしまう。


私に対する優さんの言動は、やっぱり今でも矛盾ばかりだ。
そんな彼に、私はますます夢中になっていく。
優さんの温もりを感じていると、堪らなく嬉しくて幸せで、泣きたくなる。


胸に込み上げるものがあって、思わず彼に頬ずりをしてしまった。
途端に、クスッと笑う声が耳をくすぐる。


「なに、甘えてるんだよ」


優さんがベッドに両肘を突いて、グッと上体を起こした。


「あっ……」


自分の腕の中に囲い込んだ私を、男の色香が匂い立つ潤んだ黒い瞳で射貫く。
一糸まとわぬ身体だけじゃない、心の奥底まで見透かすような視線に晒され、私は反射的に両手で胸を抱きしめ、身を捩った。


「そ、そんな目で見ないで」


今さらの恥じらいを見せる私に、優さんがプッと吹き出す。
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