ラブパッション
「どうしようかな。早く俺に幻滅してもらうためにも、夏帆が嫌がることを積極的にやらなきゃいけないんだけど」


彼が私の腕に手をかけ、剥がそうとするのを感じて、私はさらに身を縮める。


「い、意地悪っ……」

「そうだよ。こうやって徹底的に夏帆を苛める。俺を嫌いだって言わせる。それが俺の目的だからね」


優さんはまるで歌うような口調でそう言った。


「ひゃっ……」


優さんが、私の首筋に唇を這わせる。
ザラッとした熱い舌の感触が蠢き、私の背筋を、寒気にもよく似た官能的な痺れが貫く。


無意識に足の爪先が反り返ってしまう。
私の反応を観察して、優さんは吐息とともに妖艶な笑みを浮かべる。


「感じちゃダメだろ。ちゃんと、嫌がってくれないと」

「ゆ、優さ……」


優さんが、私の横顔を探るように見つめている。
私の胸はバクバクと爆音を立てて高鳴る一方。
壊れそうなほど激しい拍動を繰り返す心臓の音が、彼にも聞こえてしまったんだろうか


「まったく、君は……」


彼は妖しいほどの目力を解いて、私から目を逸らし小さな声で呟く。
ブルッと頭を振ってから、再び私に身体を重ねてくる。


「ん……優さ」


戻ってきた温もりが愛おしくて、私は彼の首の後ろに両腕を回してしっかりと抱きついた。
無意識に『好き』と呟きそうになって、ハッとして口を噤む。
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