ラブパッション
「はい。よろしくお願いします」


よかった。
同期とは仲良くやれそう。
私は心の中でホッとして、やや頬の強張りを緩めることができた。


「営業や貿易事務の経験はないそうだから、本日から二週間ほど、周防(すおう)主任に、実務指導をお願いしてある。その後、長瀬君の補佐に就いてもらう予定だ」


課長の説明を聞いて、グループの女性たちがざわめいた。


「……?」


それに気を取られていると、視界の端っこで、男性社員が手を挙げたのがわかった。


「長瀬譲(ながせゆずる)です。五年目だから椎葉さんの二年先輩。仕事では甘やかさないから、覚悟して。でも、他のことでは、なんでも頼ってくれていいよ」


スラッとした長身の男性社員が、どこか愛嬌のある目で軽くウィンクをしてくる。
人懐っこそうだし、もしかしたら、みんなの人気者なのかな。
だから、女性たちがあんな反応……?


「あ、ありがとうございます。よろしくお願いします」


慌てて挨拶を返し、私は再び女性たちを気にした。
でも、彼女たちは、私と長瀬さんのやり取りはどうやらそっちのけの様子。


「ま~た、うちの女子どもは。周防さんが絡んで、椎葉さんに嫉妬心剥き出しだよ」


ニヤニヤする長瀬さんに、女子たちはムキになって、そんなことないわよ、と言い返している。
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