ラブパッション
「夏帆。私一人で行くから、お相手して差し上げなよ」
コソッと言われて、私は焦って彼女を振り返った。
「え、菊乃。そんな……」
呼び止めようとする私には目もくれず、彼女は玲子さんに軽く会釈をした。
そして、正面玄関の方に、小走りで行ってしまう。
「あ……ちょっ……!」
「置いてかれちゃったわね」
呆然とする私を前に、玲子さんは口元に手を遣り、クスクスと笑い出した。
「外食ランチの約束でもしてたのかしら?」
「は、はい……」
「そう。声かけたりして、悪いことしちゃったわね」
そう言われて、私は小さく肩を竦めた。
もともと、私が玲子さんに気付いて見入ってしまったせいだ。
彼女は優雅な仕草でブラウスの袖を摘まみ、手首に嵌めた高価なブランド時計に目を落としている。
「そうね。よければ、私と一緒に行かない?」
「え……?」
サラッと誘われ、私は一瞬警戒心を強めてしまった。
「お昼時だし、戻ってくる頃には優の会議も終わるでしょ。待ってて。受付に、伝言お願いしてくるから」
「え。あのっ……」
玲子さんは強引に決断を下し、私に踵を返して再び総合受付のカウンターに歩いて行った。
コソッと言われて、私は焦って彼女を振り返った。
「え、菊乃。そんな……」
呼び止めようとする私には目もくれず、彼女は玲子さんに軽く会釈をした。
そして、正面玄関の方に、小走りで行ってしまう。
「あ……ちょっ……!」
「置いてかれちゃったわね」
呆然とする私を前に、玲子さんは口元に手を遣り、クスクスと笑い出した。
「外食ランチの約束でもしてたのかしら?」
「は、はい……」
「そう。声かけたりして、悪いことしちゃったわね」
そう言われて、私は小さく肩を竦めた。
もともと、私が玲子さんに気付いて見入ってしまったせいだ。
彼女は優雅な仕草でブラウスの袖を摘まみ、手首に嵌めた高価なブランド時計に目を落としている。
「そうね。よければ、私と一緒に行かない?」
「え……?」
サラッと誘われ、私は一瞬警戒心を強めてしまった。
「お昼時だし、戻ってくる頃には優の会議も終わるでしょ。待ってて。受付に、伝言お願いしてくるから」
「え。あのっ……」
玲子さんは強引に決断を下し、私に踵を返して再び総合受付のカウンターに歩いて行った。