ラブパッション
私を見る目に力を込めてから、細い足を妖艶に組み上げる。


「あの後からよ。優が、ずっとしまい込んでいた指輪を、薬指に嵌めるようになったのは」


さっきからほんの少しもぶれない、射貫くような視線の真ん中で、私はこくっと喉を鳴らした。


「どうしてかしら。……ねえ、椎葉さんは、どうしてだと思う?」


私の反応をすべて見逃すまいとしているように、玲子さんは瞬き一つしない。


「どうして、って……」


あれは、私に対する『牽制』。
でも、それを玲子さんに言えるわけがない。


結局私は、返事を濁して曖昧に首を傾げるしかできなかった。
黙る私に失望したように、玲子さんは短い息を吐く。


「あの夜、不自然だな、と思ったのは、椎葉さん、あなただけじゃないわ。優があなたと一緒にいるところに出くわして、私も同じように感じた」

「っ……」


ドクン、と、心臓が沸き立つのがわかった。
あの時……玲子さんと一緒にいた瀬名さんが、私と優さんの間にあったことを見抜いていたことを思い出す。
『玲子に、教えてやろうかな』なんて意地悪なことを言われたけど、瀬名さんが教えたわけじゃなく、玲子さんは……。
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