ラブパッション
彼女の質問に滲み出る強い疑惑に囚われ、私は凍りついたように動けない。
湧き上がるマグマのように、心臓がドッドッと嫌な鼓動を刻む。


どうしよう。
私から、なにか言った方がいいんだろうか。
でも、なにを言っても手遅れのような、さらに失敗を重ねそうな恐怖で、変な汗が背筋を伝った、その時。
バタバタと急いたような足音が近付いてきて、玲子さんがフッと目を上げた。


「玲子!」


鋭く険しい声が耳に届き、ギクッと肩を強張らせる私の横で、足音が止まる。
ハッとして大きく振り仰ぐと、優さんが玲子さんを厳しい表情で見下ろしていた。


「あら、優。思ったより早かったわね」


玲子さんは彼の剣幕に動じもせず、平然と言ってのけた。
優さんは苛立ちを抑えるように、前髪を掻き上げる。


「なに考えてるんだ。突然オフィスに訪ねてきて、椎葉さんを連れ出すなんて。非常識だと思わないのか」


怒りを抑えきれない早口な声に、私は身を竦ませる。
向かい側の玲子さんは、まったく真逆に落ち着き払った様子で、眉根を寄せて溜め息をついた。


「ランチくらいいいじゃない。それに、あなたにもちゃんと伝言したでしょ? 『椎葉さんを借りていくから、会議が終わったら、通りのカフェに急いで来てね』って」
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