ラブパッション
こんな事態になっても落ち着き払っている優さんとの間に、掴みどころのない温度差を感じる。


「ご、ごめん、なさい。私……」


動揺のあまり、つっかえながら謝った。


「私、うまく誤魔化せなくて。もしかしたら……ううん、きっと、玲子さん……」


はっきり言うのが怖くて声を尻すぼみにして、ぎゅっと唇を噛みしめる。
私の頭上で、優さんが小さな吐息を漏らした。


「君がどんなにうまく誤魔化せたとしても、結果に変わりはないよ」

「え?」


私は優さんを呆然と見上げた。
彼は、大きく目を見開く私に、どこか困ったように微笑む。


「玲子は勘付いたからこそ、君を探りに来たんだろうから」

「そ、そんな……!」


どうして?
なんで?
私は大混乱に陥り、半泣きになって顔を歪ませた。
なのに。


「構わない。お互い様だから」


さらに続く彼の言葉に、ガツンと頭を殴られたような衝撃を受ける。


「どういうこと……?」


優さんが言う意味がわからない。
私はパニック寸前になって、彼の方に一歩踏み込んだ。
優さんのスーツの裾を、ギュッと握りしめてしまう。
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