ラブパッション
その夜――。
昼間あんなことがあったから、夜八時の約束はキャンセルされると思っていた。
なのに彼からキャンセルの連絡はなく、オフィスを出た後、待ち合わせをした私たちは、ホテルに入り……。


「っ、んっ……優、さ」


彼の背後でドアが閉まる音を確認できないまま、壁に押しつけるようにしてキスをされた。
唇を貪る獰猛なキスに応えきれず、私の呼吸はすぐに乱れてしまう。


どこか急いた優さんのキスは乱暴なだけじゃなく、いつもの余裕が感じられない。
やっぱり、私との関係が玲子さんに知られたことを、本当は気にして焦ってる……?


「んっ、やっ……! 優さん、待ってっ」


私は必死に首を捩じり、彼の唇から逃れようとした。
その方向に先回りして唇を奪う彼に、いつも通り翻弄されそうになるけれど。


「ご、まかさないで、教えてっ……!」


優さんの胸についた両手が震えそうなほど、力を込めた。
顎を引いて唇を離し、彼との隙間で俯く。
私の額の辺りで、彼がゴクッと喉を鳴らすのが聞こえた。


「優さん、玲子さんのこと……」


昼間と同じ質問を、最後まで口にできずに言い淀んだ。
ちゃんと聞こえたはずなのに、優さんは答えを逡巡するように無言のまま。
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