ラブパッション
課長だけじゃなく、グループの他のみんなも、私を不思議そうに眺めている。
私はハッと我に返って、無駄に背筋を伸ばした。
「す、すみません! 椎葉夏帆です。こちらこそ、よろしくお願いします」
声がひっくり返りそうになったけど、私はなんとか挨拶を返した。
なのに、長瀬さんが、冷やかし交じりに横目を向けてくる。
「あれあれ? 椎葉さん、今周防さんに見惚れてなかった?」
そんな言葉のせいで、私に向けられる女性たちの目に、一気に鋭さが増した。
「そ、そんなことありません」
慌てて否定して顔を背ける。
課長が、まあまあ、と苦笑した。
「椎葉さんには、早く仕事覚えて戦力になってもらいたいから。周防君、厳しくも温かい指導を頼むよ」
「承知しました」
淡々とした声で返すのを聞きながら、私はもう一度彼を窺い見た。
癖のない髪はすっきりとセットされていて、前髪も目元にかかっていない。
私が覚えているのは、実年齢を判断できない、幼くあどけない寝顔だけ。
隣で飲んでいた時がどんなだったか、思い出せないけど――。
似てる。怖いくらい。
昨日の朝目覚めた時、隣で眠っていた人。
東京に来たばかりの私が、一夜を共にしてしまった、名前も知らない人に。
でも、まさか。
こんな偶然があるわけない。
私は、自分の直感を否定しようとした。
私はハッと我に返って、無駄に背筋を伸ばした。
「す、すみません! 椎葉夏帆です。こちらこそ、よろしくお願いします」
声がひっくり返りそうになったけど、私はなんとか挨拶を返した。
なのに、長瀬さんが、冷やかし交じりに横目を向けてくる。
「あれあれ? 椎葉さん、今周防さんに見惚れてなかった?」
そんな言葉のせいで、私に向けられる女性たちの目に、一気に鋭さが増した。
「そ、そんなことありません」
慌てて否定して顔を背ける。
課長が、まあまあ、と苦笑した。
「椎葉さんには、早く仕事覚えて戦力になってもらいたいから。周防君、厳しくも温かい指導を頼むよ」
「承知しました」
淡々とした声で返すのを聞きながら、私はもう一度彼を窺い見た。
癖のない髪はすっきりとセットされていて、前髪も目元にかかっていない。
私が覚えているのは、実年齢を判断できない、幼くあどけない寝顔だけ。
隣で飲んでいた時がどんなだったか、思い出せないけど――。
似てる。怖いくらい。
昨日の朝目覚めた時、隣で眠っていた人。
東京に来たばかりの私が、一夜を共にしてしまった、名前も知らない人に。
でも、まさか。
こんな偶然があるわけない。
私は、自分の直感を否定しようとした。