ラブパッション
「一時的な憐れみだけで、プロポーズなんかした俺が間違ってたのは、よくわかってる。おそらく……玲子は傷ついていたんじゃないかと、今ならわかる」


すべて話し終えた後、しばらく続いた重苦しい沈黙を破り、優さんがタイルの床に拳をついてそう切り出した。


「だから、玲子との関係から、解放されようなんて思ってない。……でも、教えてくれよ、夏帆」


床の上で拳を震わせ、くぐもった声で問いかけてくる。


「これ以上、俺が玲子にしてやれることって、いったいなんなんだ……?」


彼が、苦痛に歪んだ顔を私に向け、答えを求める。
だけど、黙ってハラハラと涙を流す私を見て息をのみ、目を逸らしてしまった。


「……ごめん」


優さんは、苦渋に満ちた声を絞って、私に謝った。


「俺達は、これで終わりにしよう」


話を聞いている間ずっと、最後にそう言われることはわかっていた。
それでも、実際に彼の口からその言葉を聞いて、私は弾かれたように顔を上げた。
喉が、ヒクッと鳴ってしまう。


「ゆ、たかさ」
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