ラブパッション
本社ビルの車寄せから、タクシーに乗った。
都会の片側三車線の広い道路に走り出し、スムーズに車線に合流する。
窓の外で、長く連なる赤いテールランプに目を遣りながら、私は無意識に「信じられない」と呟いていた。


私とは逆サイドの窓枠に肘をのせ、同じように外を眺めていた優さんが、大きな手で口を覆ったまま、私に視線だけ流してくる。
二人の間で、指を絡めて繋いだ手に、クッと力がこもる。


「信じられないって、なにが?」


優さんからそう問われて、私は我に返った。


「え……?」

「俺の離婚か?」


遠慮なく直球で確認されて初めて、心の声が漏れていたことに気付く。
ゴクッと唾を飲み、意を決して優さんの方に顔を向ける。
彼もゆっくりと口から手を離し、私に向き合ってくれている。


「ど、して?」


たどたどしく、訊ねる。
優さんは眉尻を上げるだけで、言葉を挟まない。
そうやって、私に先を促している。


「だって、この間。優さん、玲子さんと向き合えた、って……」


さっきから、頭の中でぐるぐる回り続けている疑問。
私は混乱を強めながら、なんとか口にした。
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