ラブパッション
「どうして。玲子さんが……」

「旦那の俺だけじゃなく、恋人の瀬名も可愛がる女だからね、君は」

「っ、えっ!?」


さらなる驚きで目を剥いて、私はきょときょとと瞬きをした。
優さんは私の反応を上目遣いで観察して、面白そうにプッと吹き出す。


「君はきっと無自覚なんだろうけど。長瀬が熱を上げるのも瀬名が構うのも、俺が放っておけないのも……間違いなく、君が男心を惑わせる小悪魔だからだ」

「っ……!」


前にもそんなことを言われたことを思い出す。
口に手を遣り、クックッと小気味よい笑い声を立てる優さんの前で、私はカアッと頬を染めた。
思わずピンと背筋を伸ばし、肩を怒らせてしまう。


「そして玲子も……俺ではなく、瀬名がお気に入りの君に、嫉妬した」

「……え?」


彼が笑いながら続けた言葉に、一拍分の間を置いて聞き返す。
優さんは大きく腕組みをして、顔を上げた。
私にまっすぐ視線を向けてくる。


「素直で純真。玲子にはない、君の美徳。玲子が夏帆に奪われたくないのは、俺ではなく瀬名だった。あのパーティーで瀬名といる君を見て、はっきり自覚したそうだ」


わかりやすく告げられ、私の胸がドクッと沸き上がった。
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