ラブパッション
「玲子さん、瀬名さんのこと……」

「そして、夏帆。俺も……」


無意識の呟きを、優さんが遮る。
彼は一度言葉を切ると、口に手の甲を当てて隠しながら、つっと横に視線を逸らした。


「放っておけない、からじゃない。他の男のものになってほしくなくて、気が気じゃない。だから……俺は君を、手放したくない」


唇に押し当てられた手で、声はだいぶくぐもっていた。
でも、私に聞かせるためのその言葉は、ちゃんと私の耳に届き……。


「ゆ、たかさん……?」


私は戸惑って彼の名を呼んだ。
些細な反応でも、一つも見逃さないつもりで、大きく目を見開き、まっすぐ彼を見つめる。


優さんはなにか逡巡するように沈黙して、わずかな間の後、再び私に目線を合わせてくれた。
口から手を離すと、形のいい薄い唇をゆっくりと開く。


「玲子と、俺たちのこれからについて、本心晒して話し合った。彼女は、一生守ると約束したのに愛してくれない男じゃなく、愛してくれる男と幸せになりたいと言った」

「……!」


言葉に詰まり、思わず両手で口を塞ぐ私を、優さんが揺れない瞳で射貫く。


「……俺も。心から好きで、すべてが欲しいと思う女を、目一杯大事にしてやりたい」
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