ラブパッション
「夏帆、君はね。君をホテルのベッドに運んで、そのまま帰ろうとした俺を、今みたいにこうやって、胸に抱きしめてくれたんだよ」

「……!?」


まったく身に覚えがない。
耳を疑ってギョッとすると、涙なんか一気に引っ込んだ。
大きく目を瞠る私を、彼は探るように見つめている。


「『あなたの目はとても綺麗で涼しいけど、私と似た、暗い色をしてる。なにか、寂しいんでしょう? だったら、そばにいて。こうしててあげるから』」

「っ! わ、私が?」

「朝になったら、きっと覚えてないだろうと思ったけど。理性のタガ、吹っ飛ばすには十分な誘惑だった」


彼はそう重ねながら、どこか意地悪に口角を上げる。


「~~!!」


あまりの恥ずかしさに激しく動揺して、言葉にならない呻き声をあげる。
私は再び彼に抱きつき、その肩に顔を隠した。
クスクス笑う声が、鼓膜を直接震わせる。


「認めるかい? 自分が相当な小悪魔だって」


そう言われても認めたくなくて、私はプルプルと首を横に振って拒む。
「やれやれ」と呆れたような呟きが聞こえた。


「でも、そんな君だから、俺は踏み出せた。なにもかもかなぐり捨てて……君は本当の意味で、俺を解放してくれた」


優さんがわずかに身を離し、私の頬を撫でながら顔を覗き込んでくる。


「夏帆、好きだよ。君のすべてを、俺のものにさせて?」
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